朝、栗園に立つと、山あいを真っ白な朝霧が包んでいることがあります。
栗の木も、草も、遠くの山も霧の中。
ところが、山の向こうから太陽が昇り始めると、その霧は少しずつ薄くなり、やがて何事もなかったかのように消えていきます。
ほんのわずかな時間だけ現れる、栗園の朝の風景です。
けれど、この朝霧は、ただ美しいだけのものではありません。
昔から丹波では、
「霧の立つところは栗がおいしい」
と言われてきました。
山に囲まれたこの土地では、日中は太陽の光を受けて気温が上がり、夜になるとぐっと冷え込みます。
昼間、栗の葉は太陽をいっぱいに受けて光合成を行い、実を育てるための養分をつくります。
そして夜、気温が下がることで木の呼吸による養分の消耗が少なくなり、その分、実へと養分が蓄えられていきます。
朝霧は、そんな昼と夜の大きな寒暖差がつくり出す、この土地ならではの風景でもあります。
そして朝が来る。
霧が晴れた栗園には、今度はたっぷりと太陽の光が降り注ぎます。
夜の冷え込み。
朝の霧。
そして昼の太陽。
その繰り返しの中で、栗はゆっくりと秋の実りへ向かっていきます。
私たちが栗を育てているようでいて、
本当は、この土地の自然に育ててもらっているのかもしれません。
太陽が昇れば、一瞬にして消えてしまう朝霧。
エル・ファーム大槻の栗園では、
そんな目には見えなくなってしまう自然の営みもまた、
一粒の栗をつくっています。


